小石原焼・高取焼と暮らす人々③
生活に馴染んでこそ
生きてくる器

福岡県東峰村 マルダイ窯 太田芳子さん・いづみさん

「これはね、お義母さんから譲り受けた100年もののぬか床で作ったの。とっても美味しいのよ」。そういって小石原焼の器でぬか漬けを出してくれたのは、『マルダイ窯』のおかみさんこと芳子さん。
作陶している娘のいづみさん夫婦に代わってお店に立つほか、畑での野菜づくり、料理上手だった義祖母と義母に教わったこんにゃく作りや田舎の家庭料理もお手のものだ。小さな頃から台所仕事を横で見てきたいづみさんも自然とその料理の腕を受け継いでいる。

芳子さんが東京から嫁いできたのは50年程前。「お嫁に来た時は食器棚に瀬戸物の器しかなくて驚いたわ。だけど私は小石原焼の方が料理に合うと思ってどんどん増やしていったの」。今では食器棚にある器のほとんどが小石原焼で、さらには部屋の隅に置かれた植木鉢やリンゴを入れた器、ぬか漬けが入った大きなぬか床甕にいたるまで、生活の中に小石原焼が当たり前のように溶け込んでいる。

「いっぱい食べてね」といつの間にか食卓には家庭料理がずらりと並び、会話も賑やかに。“器は料理を盛ってはじめて生きる”と言う通り、芳子さん親子の手にかかるとどの器も生き生きと嬉しそうに見えた。

◆ ABOUT - マルダイ窯 - ◆

江戸時代から続く小石原焼の窯元「マルダイ窯」は茅葺き屋根の母屋が目印。

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